DRAGON DRONES

プロドローンインストラクターが綴る本気のドローン情報

【避難などにドローンを使う】災害時、避難をする際にドローンと周辺機器の使う

ここ数年、日本国内では想定をはるかに超えた災害が多く発生しています。
メジャーメディアなどでは当該地域の状況をドローンで撮影した動画や写真などを使用したニュースを放映したり新聞などの紙媒体で使用しています。
報道現場ではドローンでとらえた低空域の俯瞰写真や動画が使われる時代になったのです。
また被害に遭われた方の捜索や、災害地域の被害状況の把握にもドローンは使用されています。
一方、ドローンを使用して災害地域から自力での脱出安全地域までの経路確認などにはまだ使用実績が少ないようです。
河川の氾濫や高潮被害、土砂崩れによる道路やライフラインの崩壊時、初動による確認にもドローンの使用は少ない状況です。
そこで、今回はどの地域でも発生してもおかしくない自然災害時におけるドローンの活用を考えてみたいと思います。

注意事項

ここに書かれている内容は、以下の注意事項ならびに各状況下における人命の安全を確保できている状況下での作業です。
*あくまでの人命を優先した場合を想定した内容です。
自衛隊などが救助で上空を飛行する際がある場合は十分注意してください。
また、状況によっては航空法などの法律による罰せられる事もあり得ます。
・被災している状況下で心身ともに健康な状態であること。
・火災や土砂崩れなど、現在の状況より悪化する恐れが無い。
・ドローンを飛行することで、現在より安全な状況への変化を望める。
・ドローン飛行による避難路の探索が最も状況好転になる手段と考えられるとき。
・目的はドローンを飛行させることではなく、避難路探索や現状況からの好転を第一とする。

災害時に必要となる機材

飛行経験に関わらず、災害時にドローンを使用した避難や救助支援を行い際には通常とは異なる機材が必要になります。
またその機材が緊急用として代用する手立てに関しても記述しました。

ドローン本体

ドローンは法律上では定義がされてはいるものの、実際災害時に使用に耐えられる機体は限られます。耐風能力や耐雨能力に優れバッテリーの持続時間が長いものを選定します。
・DJI Mavic PRO
・DJI Mavic 2 PRO
・DJI Mavic 2 ZOOM
・DJI Phantom4シリーズ
・DJI Inspire1シリーズ
・DJI Inspire2シリーズ
以上が、災害時でも比較的安定した飛行が望める機体です。
カメラを使用して、現況の録画や撮影を行えます。
また撮影された画像データにはEXIFという情報も同時に記録され、GNSSGPS)による位置情報も含まれるので、インターネットや携帯回線で画像ファイルもしくはEXIF情報だけをテキストデータとしてSMSで送ることで位置情報を救助者に伝えることができます。

周辺機材

・バッテリー
バッテリーは最低でも3つあると、3方向へ3kmずつの経路探索が行えます。
ただ、飛行方法を工夫することで1つのバッテリーでも避難経路の探索を効率よく行えます。
バッテリーは付属もしくはオプションなどで、USBバッテリーとしても使用可能です。
飛行の必要がない場合はスマートフォンなどの補助電源として使用できます。

・風速風向計
通常は飛行環境の地上風を観測するために使用しますが、避難時は火災や近隣の工場で扱う原材料の爆発なども想定しなければなりません。風速風向計で風向きを確認して、風上にある工場などを地図で確認したり、今後の天候変化を予測するために使用します。
・離着陸パット
ドローンで使用するヘリパットは表裏でオレンジ/ブルーの配色のものが多いです。
離着陸用に使用するのではなく、ブルー面にアルミホイルを貼り反射板として上空からの発見されやすいように使用します。
また、一時的な雨をしのぐ傘の代用品としても使用できます。
・測距計
ゴルフ用や工事用として販売されている測距計。緊急時に飛行させる際に飛行の障害となる物の距離を測るだけでなく、避難経路に到達する距離や短眼鏡としての役割も果たせます。
タブレット
DJI GO4などのアプリを使うためのiPadなどのスマートデバイスであるタブレットは、SIMカードが挿入されていればほとんどのモデルがGNSSGPS)センサーがついているので地図情報を正確に得られます。紙の地図とコンパスでの移動には知識と経験が重要ですが、iPadなどの地図情報は正確な上に現地点の情報も得られます。
また、SNSなどからの情報収集や書き込みなどもできます。

災害ケースによる飛行方法

災害と言っても様々なケースや状況によって様々です。
ここでは現時点で考えられる災害のケースによって避難するためにドローンを飛行させる場合の注意点と飛行方法について説明します。

ケース1 土砂災害によって避難経路としている道路などが塞がれている

大雨や地震によって近隣の山や丘陵地が崩れてしまい、他地域へつづく道路が塞がれてしまった場合、被災地域からどの方向へ逃げられるのかもしくは崩れた状況を把握するためにドローンによる空域からの被害状況把握は非常に効果的です。
ただ、電気などが遮断された状況下で残されたバッテリーで飛行しなければならない時、ただ闇雲に飛行させるのは得策ではありません。まずはバッテリー1個で全体および避難経路として使用できそうな範囲の探索を優先させます。

・離陸地点から一気に150mまで上昇させる
まずは離陸地点上空に障害物がないことを確認し、一気に地上高150mまで上昇させます。

・まずは真下を静止画撮影
カメラアングルは真下にします。上昇中に動画ではなく静止画で数枚撮影を行います。撮影データに位置情報が記録されるため後に移動困難に陥った状況下で救助者に位置情報を伝えるうえで重要な情報となるためです。

・続いて動画撮影で全周把握
上昇完了後、カメラのチルト角を水平にして動画モードに切り替え360度(全周)動画撮影をおこないます。次にチルト角を45度(斜め下)にして同じように360度撮影を行います。
この動画情報はその時点での状況を把握できるほかインターネットが接続出来た際に周りの状況を配信でき救助に役立つためでもあるのです。
バッテリー残量がまだ60%以上ある場合は引き続き避難経路の探索を行います。
更に災害発生後3時間以上経過している場合では、近くの安全地域まで消防や警察などが救助や避難誘導を行っている場合があるので、ケース3につながる飛行も可能です。
機体の状況を把握するDJI GO4には機体の傾きがわかるインジケーターも備えています。地上高150mでの風向きを確認することができるのでこの機能はよく把握しておいた方がいいでしょう。

・避難経路探索に集中
飛行中に確認できた状況により、避難経路として使えそうな方向に飛行させます。
この時の注意点は高度です。詳細を知りたいあまり飛行高度を徐々に下げていくと近隣の木や電線、高架橋などに衝突してしまう恐れがあります。
緊急飛行とはいえ飛行範囲に障害物があることを想定して、比較的高空で経路探索を行いましょう。
探索しながら動画撮影を行います。

・撮影はオート設定で
設定はオートで行います。マニュアル設定にして日照の変化や影などが発生した際に黒つぶれや白飛びを極力避けるためにオートをしようします。通常の動画撮影ではオート設定は推奨しませんが、災害時の避難経路の確保を優先させるために出来る限り撮影の失敗を防ぐためにもオートが役立ちます。

ケース2 近隣道路などに亀裂や崩壊がみられる

土砂崩れが無くすぐに避難しようと車に乗って移動100m。先に道路亀裂が見られる場合、元居た場所が安全と判断したらすぐに引き返します。
では反対側の道路に逃げた方がいいのか、それとも他の方角なのか判断がつきません。
ドローンで高空から避難経路を確認して、安全な地域への非難を効率よく実行します。
・基本は150m上空から確認
土砂災害での状況確認と同じです。まずは上空から全周の状況を確認します。
この時点で、遠方で煙などが発生している場合は注意が必要です。
その方角が人口が集中している地域の場合大規模な災害が予想できます。
ただし、経験上一つの工場での火災でも取り扱っている材料によっては非常に大きな煙となっているので、その煙の発生元の数を確認します。
また、幹線道路などを使用した避難は車両が一気に集中して数時間身動きが取れない場合が考えられるので、高い建物が少ない生活道路などを使って避難します。
・移動には必ず水を用意する
移動には必ず飲めることが可能な水と、飲めなくともフロントウィンドウや人体の汚れを落とすために使える水を用意します。またトイレタンクの水は飲用可能な場合が多いので選択肢の最後の方に加えておきましょう。

ケース3 目視、もしくは熟知している地理環境下で救助要請を行う

ドローンで救助要請を行う意外に方法がない場合では、単にドローンを飛行させるだけではその目的を果たせません。

・まずは目立つ布などを期待のスキッド(脚部)に縛る
救助者のいる場所にドローンが飛んできたことを出来るだけ早く知らせるために、認識しやすい色の布を縛り付けます。多少のバランスが崩れていても布程度の重量であればドローンの飛行に著しく影響を及ぼすことはありません。
色はオレンジか黄色などが認識しやすいので、普段使用する雨具などを購入する際はオレンジなどにしておくと役立ちます。

・必ずメッセージを書く
紙などで書かれたメッセージをテープに張り付けて飛行させることも有効ですが、急を要する状況下では機体自体に油性マジックではっきり書いてしまいます。
住所、氏名、性別、電話番号、人数、けが人の有無を書きます。
SNSのIDも記載しておくとインターネット接続ができたときに役立ちます。
そして、バッテリーに余裕があると予想できる時は
「読み終わったらカメラの前でOKと意思表示してください」
「再度離陸して、ドローンを戻します」
と記述しておきます。
ドローンを手元に戻すことでバッテリーの交換で再度飛行ができたり、コミュニケーションが行えるからです。
他にも、カメラチルトで意思表示を行うことも可能です。そのためにもお持ちの機体の機能と操作方法は十分に把握しておきましょう。

急なブログ記事の投稿となりましたが、お持ちのドローンでご自身や近隣の方々の命を救えるかもしれません。
飛行技術も重要ですが、ドローンをサバイバルに使用する方法の想定も必要になるかもしれません。