DRAGON DRONES

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アプリに頼って撮影してはいけない! UAV写真測量のラップ率設定は正しい?

ドローン測量、UAV空中写真測量において、DJI GS PROのラップ率設定はとても便利な機能です。
しかし、オーバーラップ率を80%に設定したからといって必ずしも80%ラップの維持はできません。


計測基準での80%ラップとは

そもそもなぜ80%以上のオーバーラップ率が必要なのでしょうか?
写真測量の基本は二枚の写真を左右の眼で見て立体化できるようにする実体視の原理が使われています。
航空写真測量では以前から計測部分が重複した写真を基にA8を代表とする図化機で高さを計測しながら地形を図面化していました。
この原理もUAVによる空中写真測量でも利用しています。
そして、写真重複度は単に重なっていればいいというものではなく、国土地理院が作成したUAVを用いた公共測量マニュアル(案)の三次元点群データ作成における写真の重複度として80%(撮影後に写真重複度の確認が困難な場合は90%)を標準とされているためです。
*公共測量マニュアルは2016年3月作成2018年3月改定
そのために、写真の重複は最低限80%重なっている必要があるのです。

80%ラップを設定するのはGS PROで行っている

DJI製品のマルチコプターをUAV測量に用いる場合ほとんどの使用者がDJIが無償提供しているDJI GS PROを利用しています。
GS PROの細かな設定はこちら
GS PROでは手動で行うと煩雑だったラップ率による撮影ポイントの算出が自動計算されるのでとても便利です。そのため多くの方がGS PROによるラップ率の設定に頼っています。
空中写真測量になれていないプロの測量士の方も勘違いしてしまいそうですが、このラップ率の設定は計測する地形によって変わってしまいます。


どんな環境だとラップ率は変化するのか?

ラップ率が変化してしまう地形とは、計測範囲の地形変化によって離陸地点との標高差がある場合はラップ率も変化してしまうのです。
カメラで撮る写真の範囲はレンズの焦点距離と画像を捉えるセンサーサイズ、撮影したい点までの距離によって決まります。
例えばDJI  Inspire2にX4Sカメラシステム、15㎜のレンズを搭載した場合
対地高度45mで撮影できる範囲は水平51.9m、垂直39mです。
DJI GS PROおよびDJI GO4での高度基準は離陸地点です。
離陸前に「ホームポイントが更新されました」とアナウンスが流れているポイントを対地高度0mとしています。(ホームポイントの登録は緯度経度のみ)
離陸後、GS PROであらかじめ設定した高度まで上昇し、撮影を開始します。
計測(撮影)範囲の標高が変化しても、マルチコプターの高度は変わらず撮影を続けます。
実はDJI GS PROでの飛行では標高に合わせた対地高度の維持は行わないのです。

ではラップ率はいくつにすればいいのか?

そうなると困ってしまうのが最低ラップ率80%を確保した状態での撮影飛行です。
闇雲に90%だからいいだろうという簡単なものではないので、そこはきっちり計算しましょう。


標高変化は設定対地高度の+50%まで

例えば上述のマルチコプターの条件で、離陸地点から45m高度で90%ラップ設定で飛行させた場合、標高が+22.5m(離陸地点からの対地高度22.5m)までは標準ラップ率限界の80%を確保できます。しかし、限界の80%ラップを下限値して計測した場合、15m突出した地形などの見落としなども考えられるの高度変化の上限値を+40%程度としたほうがいいでしょう。

では標高が下がる場合は問題ないのか?

 単純にオーバーラップ率で考えれば下限値80%を上回るので一見問題なさそうに思えます。しかし、画素寸法の基準を満たさない場合もあるので注意が必要です。
Inspire2 X4S 15mmの場合、対地高度47m程度で一画素あたりの寸法は1cmです。
計測撮影では水平移動が基本ですので、そのまま飛行しても計測範囲の標高が下がった場合などでは規格の画素寸法を満たせなくなります。
対処方法としては、画素寸法の限界高度ではなく計測範囲の標高差と離着陸ポイントを考慮した飛行計画をGSPROで作成しましょう。

高低差のチェック方法

現地調査にてTSなどで確認する方法が理想的ですが、見積り段階などまだ計測対象範囲の測量が確定していない場合などは国土地理院でWeb公開している電子地図を利用しましょう。
指定範囲の3Dマップや断面図など標高差を確認できるツールが豊富に提供されています。また、DIDや飛行場の位置なども表示できるのでUAV測量には欠かせない航空局への許可や申請の必要可否判断にも使用できます。